光ファイバーセンシングとは?
光ファイバーセンシングは光がファイバーに沿って移動する際の物理特性を利用して温度、歪み、その他のパラメータの変化を検出します。光ファイバーセンシングはファイバーをセンサとして用いてファイバーに沿った数千もの連続センサポイントを作成します。これは分散型光ファイバーセンサを使用しており、分散型光ファイバーセンシングと呼ばれます。
ファイバー自体を測定する装置は一般にインテロゲーターと呼ばれます。その目的は、標準または特定のファイバーを使用して、それに沿った温度と歪みをラマンおよびブリルアン分布型光ファイバーセンサ手法を用いて測定することです。
たとえば、ファイバーセンシングインテロゲーターを使用すると、以下のようなことができます。
- 送電線に沿ったホットスポットを検出し、位置を特定する。
- 光ケーブルの過度な歪みを検出し、位置を特定して、破断する前に対応する。
以下はファイバーセンシング適用事例です。
ファイバーセンシングの仕組みは?
光ファイバーケーブルはテストステーションと外部センサ間の通信路として機能できます。これは外部センシングとして知られています。一方、そのファイバー自体が光ファイバーセンシングシステムとして機能する場合、これは内部ファイバーセンシングとして知られています。
この種のファイバーセンシング技術の利点は、ファイバーと外部センサ間の個別のインターフェイスが必要ないことで、これにより複雑さとコストが低減されます。これを可能にするためには、有用なデータを提供できる範囲で、温度や歪みの変動などの外部刺激が測定可能な形でケーブル内の光源に影響を及ぼす必要があります。
光子がファイバー内の粒子に接触した後ランダムに散乱することをレイリー散乱と呼びます。検出器に後方散乱された光の量、波長、位置により光ファイバー内の減衰事象の強度と位置を判定できるため、この原理はOTDR ファイバーテストなどのさまざまなファイバーテスト手法で使用されています。
同様に、ラマン散乱はストークス帯域内の光源に後方散乱される光子内に温度による変化をもたらします。ストークスおよび反ストークス帯域の後方散乱光の強度差を測定することで、ファイバーに沿った任意の位置での温度を正確に決定できます。
ブリルアン散乱は後方散乱光の波長が予期したとおりの外部温度および音響刺激の影響を受けるのと同じ様な現象です。このデータに同位置での温度の知識を加えて、ファイバーが受けた歪みを正確に決定し、ファイバーのどの領域(ゾーン)が影響を受けたかを判定できます。
分布型光ファイバーセンシング
分布型光ファイバーセンシング(DFS)では、ラマンおよびブリルアン散乱が効果的に使用されています。ラマン散乱は分布型温度センシング(DTS)に、ブリルアン散乱は分布型温度および歪みセンシング(DTSS)に使用されます。これらの測定値はファイバーの光損の影響を受けないため、数十キロメートルに及ぶ区間の温度および歪みを正確に監視できます。
ここでの「分布型」とは、単にファイバーの全長を通して連続的に測定できるファイバーセンシング技術、すなわち分散型光ファイバーセンサを指します。基本的には、ファイバー自体がセンサです。これらのファイバーセンシング方法は完全に固有のものであるため、温度が 100˚C(212˚F)未満にとどまると予想され、ファイバーが過度の化学的または機械的な破壊にさらされない場合には、標準的な通信用ファイバーを媒体として使用できます。
ファイバーセンシングの進化
1970 年代に光ファイバーが通信方法として出現する前に、センシングアプリケーション用のファイバーの可能性はすでに実現されつつありました。非接触振動測定に用いる外部ファイバーセンサであるフォトニックセンサは 1967 年に特許権が取得され、1980 年代半ばまでには、光ファイバージャイロスコープ原理が確立されました。ファイバー内に含まれるレーザー光源の位相変移を追跡することで、正確な循環データが得られます。
シングルモードファイバー、カプラー、スプリッターなど通信光ファイバー用に開発されたものと同じコンポーネントおよびインフラは、同様に光ファイバーセンシングインフラにも適しています。電気刺激の影響を受けない、長距離レンジ、耐腐食性という特性は、ファイバーセンシングの追加の利点です。最初の内部ファイバーセンシングは 1970 年代に開発されましたが、分布型光ファイバーセンシングが温度、歪み、圧力、音響、その他の測定に広く使用されるようになったのは 1990 年代初期です。石油ガス業界が、分布型光ファイバー温度センシングシステムの計り知れない利点を認識した最初の業界でした(1990 年代後期)。
これと同時期に、微小光「ミラー」パターンをファイバー全長に組み込み、変更を施したファイバー構成を使ったファイバーブラッググレーティングが開発中でした。これはアルゴンイオンレーザー実験中に誤って発見されたものですが、光ファイバーセンシングのタイプによっては有用なことが実証されています。
グレーティングは選択した波長を反射し、他の波長を通過させることで、フィルターとして機能します。反射される波長は温度、歪み、圧力により異なるため、ファイバーの各グレーティングで特定のシグネチャーを作成できます。この形式は多数の産業界で効果的に使用されていますが、これには特別なファイバー構成と非常に高分解能の波長解析が必要であるため、一部の光ファイバーセンシングアプリケーションではコストがかかりすぎます。
2017 年にはファイバーセンシングの利点について一般、政府、産業内部者を啓発するために、非営利団体の光ファイバーセンシング振興協会(FOSA)が設立されました。多数ある既存および潜在的な利点に基づき、FOSA は光ファイバーセンシングの地震活動、交通輸送など広い分野での利用についての啓発資料を作成しています。同協会とその幹部はこのようにして、この革新的なファイバーセンシング技術の普及に貢献しています。
分布型光ファイバーセンシングのアプリケーションは何か?
ファイバーセンシングインテロゲーターで対応できるアプリケーションを幾つか挙げてみましょう。
- 光ネットワークセンシング:光ファイバーネットワークの保護、検査、監視
- インフラ監視用センシング:ファイバーをプローブとして使用し、インフラ監視を行うことができます。この事例では、ファイバーをブリッジ、パイプライン、セキュアアパーチャー、ダム壁など、クリティカルなインフラに沿って配備し、ファイバーが急激な歪みや動きを示したり、ファイバーの温度がインフラを損傷または障害の危険にさらすような場合に警告を発するように設定できます。これは保安ドアやマンホールカバーの開閉違反に警告を発することで安全を確保するために使用できます。
VIAVI ファイバーセンシングインテロゲーターを用いたインフラ監視アプリケーションが幾つか利用可能です。
- パイプラインに沿った地盤移動の検出
- パイプラインの機械的変形の検出
- パイプライン、堤防、ダム等に沿った漏れの検出と位置特定
- 光通信ネットワーク上のクリティカルポイントの検出と位置特定
- 送電線に沿ったホットスポットの検出と位置特定

VIAVI はどのような種類の光ファイバーセンシングインテロゲーターを提供するか?
VIAVI ファイバーセンシングポートフォリオには以下が含まれます。
- ラマン OTDR 技術に基づくDTS(Distributed Temperature Sensing、温度分布測定)
- ブリルアン OTDR 技術に基づく DTSS(Distributed Temperature and Strain Sensing、温度と歪み分布測定)
定期的にインフラを検査するには?
VIAVI MTS-8000 プラットホームに DTS や DTSS モジュールを搭載したポータブル型を使用すると、検査官はフィールドでファイバー測定を行うことができます。あるいは、ONMSi および DTS または DTSS モジュール搭載のラックマウント OTU(光テストユニット)を使用して定期トレースすることでファイバーを監視し、これにより最初の基準トレースから変化があった場合に警告が発せられるようにできます。
VIAVI DTSS の例を以下に示します。
- VIAVI DTSS インテロゲーターはブリルアン OTDR(BOTDR)です。光の短いパルスが光ファイバーセンサとして使用されているファイバー中に発せられます。前方への光の伝播によりブリルアン後方散乱光が 2 つの個別波長でファイバーに沿ったすべての点で生成されます。
- ブリルアン後方散乱光の波長は前方入射光の波長とは異なり、「ストークス」または「反ストークス」と呼ばれます。ストークスと反ストークスブリルアンレベルおよび周波数の違いは、ファイバーに沿った温度および歪みのイメージです。
ファイバーテストはどのようにクリティカルインフラまたはファイバーネットワークの修理時間(MTTR)を短縮できるか?
ファイバー監視は、変化が検出され次第、警告を発します。また、ファイバー上で検出された事象の位置をジオロケーションマップ上で特定します。これにより、組織はファイバーの検査または修理を行うために毎回正確な場所に作業者を派遣でき、ファイバーに沿って問題箇所を特定するのに長時間費やす必要がなくなります。ファイバーテストの詳細を見る。
顧客はファイバー破断によるサービス停止を報告しますが、破断した場合、ケーブルは破断や損傷部分の両側で永続的な歪みが加えられていることが多くあります。バックホーがケーブルを掘り上げた例を見てみましょう。ケーブルは引かれ、強く引っ張られ、歪められました。 歪みの検査により、作業者はケーブルのどのセクションを交換する必要があるかを正確に決定し、ケーブル所有者は DTSS 光ファイバーセンシングの証拠によって損傷の責任を負う当事者に責任を負わせることができます。 空中ケーブル上に倒れた木の枝など気象状況や災害の残骸による損傷の場合も同様です。


ネットワークファイバーの最も一般的でありながら診断が困難な問題は、過剰な歪みがファイバーに掛けられた場合です。これによりファイバーが永続的に伸ばされ、弱められ、光伝送特性が変化する場合があります。下に、DTSS を用いた歪みテストで 3 つの歪みピークが示された結果を表示します。このファイバーのこれら 3 つの領域はすべて弱められていますが、従来型のレイリー OTDR ではこのような問題は検出されません。これらのピークはこのファイバーを交換しなければならないことを示します。

ファイバーセンシングの将来は?
光ファイバーセンシングを通してすでに実現されている広範な利点を考慮すると、既存の製品の効用とコスト効率は今後開発される新アプリケーションにより向上され続けるとみなしてよいでしょう。FOSA は「スマートシティ」、モノのインターネット(IoT)の統合、および困難な環境向けに特別設計された新しいファイバー構成におけるファイバーセンシングの使用、ならびに、これらの可能性の多くを掘り下げて探求し続けています。
光ファイバー形状センシングは、長距離および複雑な幾何形状でのリアルタイムの正確なデータ位置づけを可能にする新プロセスです。関心の対象にファイバーを組み込むか接続することで、風力原動機、トンネル、高層ビル等の構造のフォームファクターを継続的に監視し、同時に温度、圧力、その他のパラメータを追跡できます。
これと同じ形状センシング機能は、新たな医療機器革新における人体の探求および診断にも使用できます。光ファイバーセンシングは、手術計測器の追跡、画像のサポート、さらには血管状態の診断にも使用できます。国境保安がますます重要視される今日、光ファイバーセンシング技術は面倒な物理柵なしで侵入を突き止められる光ファイバー「柵」にもつながる可能性があります。
光ファイバーを通して可能となった莫大なデータ伝送および通信革新は広く認識されていますが、これらの同じ基本コンポーネントによりサポートされている多岐に渡る分布型ファイバーセンシング機能はそれほど知られていません。社会がより繋がれるようになるにつれて、監視、保安、および対応時間の最小化への要求はますます強まっています。光ファイバーセンシングの独創的な使用により、これらの実現が可能になると思われます。
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